特集・コラム

仮想化基盤運用コラム

第7回 仮想化基盤の仕組み(後編)

著者:運用・自動化サービス推進部 紫藤 泰至

仮想化とは「幻を見せる技術」

コンピュータを中心とした機器の集まりであるIT基盤を「仮想化」すると、どのような仕組みになるかを説明していきます。

皆さんは「仮想化」と聞いて、何を考えるでしょうか。何となく分かっていても、うまく説明できないのが正直なところだと思います。
私は、「仮想化」のことを「幻を見せる技術」と説明しています。もう少し長めに言い換えると、「現実には存在しないものをあたかもそのように見せる技術」です。

それでは、コンピュータが「仮想化」に至るストーリーを紹介しましょう。

第3回のコラムで説明した通り、昔は大きなコンピュータがドンと1台あって、それをみんなで使っていました。その後、計算等の役割ごとに小さなコンピュータ複数台組み合わせ、それぞれのコンピュータをネットワークでつないで情報のやり取りをさせるようになりました。この方法によって、大きなコンピュータに匹敵する性能を低価格で実現したのです。

これはとても良い方法に見えたのですが、新たな問題が発生しました。小さなコンピュータをたくさん揃えるために、かえってお金がかかるようになっていったのです。何とかならないかと調べてみると、たくさんあるコンピュータのほとんどは忙しい時だけ働き、多くの時間は何も仕事をしていないことが分かりました。皆さんのPCもそうではないでしょうか? 会議中やお昼休みなどは電気だけ使って、仕事らしい仕事はしていないはずです。

「それなら、1台のコンピュータで複数のコンピュータが動いているように見せることはできないか」と考える人が出てきました。そして、作ったのが下の図にある仕組みです。
複数コンピュータがあるように見せかける
複数コンピュータがあるように見せかける
上の図で、一番下にある1台のコンピュータを「物理コンピュータ」、上にある複数のコンピュータを「仮想コンピュータ」と呼びます。仮想コンピュータのCPU、メモリ、ハードディスクは、物理コンピュータのものを共用します。
これを例えるなら、今までのコンピュータは一戸建てで、仮想化した状態はマンションです。水道管、ガス管、エレベーターなどは共用しますが、敷地面積当たりの住人を増やすことができます。これによって、作るコンピュータの数が減り、よりコストを抑えることが可能になりました。

こうした発想は古くからあり、20年以上前から実用化されていましたが、あまり流行りませんでした。現在「仮想化」はとても注目されており、「クラウド」を実現する基礎技術といわれています。どうして今になって「仮想化」が脚光を浴びるようになったかというと、昔の「仮想化」の技術には1つの問題があったからです。

仮想化の特性として、物理コンピュータのCPU、メモリ、ハードディスク(これら3つをあわせて「リソース」と呼びます)を共用します。仮想コンピュータ同士が仲良くリソースを分け合っているうちは良いのですが、奪い合いの状態になると大変です。CPU、メモリ、ハードディスクをどんどん使っていくことで、同居している他の仮想コンピュータの処理にも影響を及ぼすことがあり、これが大きな問題だったのです。

1つの仮想コンピュータが極端なリソースを使用しないように制限をかけることも可能ですが、それではこの仮想コンピュータの処理に影響が出てしまう可能性があります。

解決方法の1つとして、物理コンピュータのリソースを増やすことが考えられます。CPUをよりデータ処理速度の速いものにする、メモリやハードディスクの容量を増やすなどによって、物理コンピュータの性能を上げ、仮想コンピュータに割り当てられるリソースを増やすことで、問題の解消を狙います。

しかし、ここにも問題がありました。CPU、メモリ、ハードディスクを増やすためには、いったん物理コンピュータを停止する必要があるのです。コンピュータは24時間365日動いていることが普通なので、同居している仮想コンピュータを同じタイミングで一斉に停止させるには様々な調整を行わなくてはなりません。

また別の解決方法として、余裕がある別の物理コンピュータへの引越しも考えられます。しかしそのためには、引越しをする仮想コンピュータを停止する必要があります。もし仮想コンピュータを停止することが難しければ、この選択肢の採用も難しいでしょう。

リソースが足りなくなったら増やせばよいのですが、増やすためには一旦物理コンピュータや仮想コンピュータを停止しなければならない。これが、仮想化の普及を妨げる大きな問題だったのです。
仮想化が流行らなかった理由
仮想化が流行らなかった理由
しばらく前まで、仮想コンピュータの引越しをするには「コンピュータを停止しなければいけない」ことが常識でした。
しかし2000年代中盤になって、この不可能が可能になる技術が実用化されました。それが「ライブマイグレーション【live migration】」です。

ライブマイグレーションとは、仮想コンピュータを起動したまま、物理コンピュータ間を引越しできる技術です。この技術の登場によって、仮想化基盤が一気に開花したといっても過言ではありません。画期的な技術なので、仕組みを簡単に説明しておきましょう。

まず、物理コンピュータには、ハイパーバイザーと呼ばれるOSの機能に仮想化の機能を加えたソフトウェアを乗せます。このハイパーバイザーの上に仮想コンピュータを乗せます。仮想コンピュータは、物理コンピュータのCPU、メモリを共用しますが、割り振られていたディスクは別のところに格納します。この点がこれまでの仮想化との違いです。

ハードディスクは、ストレージと呼ばれる大きなハードディスクに格納します。そして、このストレージは、複数の物理コンピュータからアクセスができるようにします。つまり、ネットワークに接続している全ての物理コンピュータで、個々の仮想コンピュータのノート(ハードディスク)を見せ合いっこすることになります。これによって仮想コンピュータがどの物理コンピュータに引越ししても、ノート(ハードディスク)を見ることができます。
仮想化基盤の仕組み
仮想化基盤の仕組み
ライブマイグレーションという技術を使用して仮想コンピュータを引越しする時には、次の手順を踏みます。

①引越し元の物理コンピュータは、引越し先の物理コンピュータに仮想コンピュータが引越しすることを伝える
②引越し先の物理コンピュータは、引越しする仮想コンピュータのノート(ハードディスク)をストレージから探す
③引越しする仮想コンピュータは、メモ帳(メモリ)を少しずつちぎって、引越し先の物理コンピュータに渡す
④全てのメモ帳(メモリ)を引越し先の物理コンピュータに渡し切ったら、引越し完了
ライブマイグレーションの仕組み
ライブマイグレーションの仕組み
このように仮想コンピュータの引越しを容易にすることで、仮想化基盤の技術がどんどん普及していったのです。これによって物理コンピュータの数を減らし、コストを抑えながら高性能のコンピュータを使うことができるようになりました。

仮想化のメリットはコスト上の優位点だけではありませんが、これは次回以降に説明していきます。

第1回のコラムで、「仮想化基盤」は運用に携わる者にとって「黒船」であると説明しました。黒船来航をきっかけに日本は開国を余儀なくされましたが、仮想化という技術は「運用」に対してどのような影響を与えたのでしょうか? 次回は、「仮想化基盤運用」とそれまでの「運用」との違いを説明していきます。

■次のコラム
第8回 仮想化基盤を運用する

■前回のコラム
第7回 仮想化基盤の仕組み(前編)

著者:運用・自動化サービス推進部 運用デザイナー 紫藤 泰至

メインフレームからのシステム運用の経験を活かし、お客様のシステム運用をデザインする業務を歴任。
現在は、仮想化基盤(プライベートクラウド)運用、運用自動化をデザインするコンサルティングに従事。
ITIL Expert保有。

※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。

ソフトウェア ロボットソリューション 詳しくはこちら メールマガジン 登録はこちら
一覧を見る

事例紹介

長年の安定した品質により、数多くのお客様のビジネスを支えています。

一覧を見る資料DL

pagetop